「今日死ぬか」と問われた妻、目を閉じて「ええよ」…夫はマフラーで首を絞めた
承諾を得て妻(80)を殺害したとして、承諾殺人罪に問われた広島市安佐北区、無職村武哲也被告(72)の初公判(水越壮夫裁判官)が24日、広島地裁であり、村武被告は「(間違い)ありません」と起訴事実を認めた。検察側は懲役3年を求刑し、即日結審した。公判では、被告が体が不自由な妻を介護してきたが、体力的・精神的に限界を迎えたといい、「老老介護」の厳しい一端が明らかになった。
起訴状では、村武被告は4月30日朝、自宅で妻の亥聖子(いせこ)さんの承諾を得て、首をマフラーで絞め、窒息死させたとしている。 検察の冒頭陳述などによると、村武被告は2013年頃、直腸がんとなり、手術や抗がん剤治療を重ねたが、がんが再発・転移し、体力も衰えていったという。
一方、亥聖子さんは15年頃、脳梗塞(こうそく)を患い、左半身がまひし、その後、骨折で長期間入院した。体が不自由な亥聖子さんは、他人に迷惑をかけることを嫌がり、介護施設への入所を拒んだため、村武被告が介護をしていた。しかし、村武被告は昨年頃から、体力的にも精神的にも限界を感じ、心中を決めたという。
事件当日、「今日死ぬか」の問いかけに、亥聖子さんは目を閉じて「ええよ」と答えたといい、村武被告は亥聖子さんのマフラーで首を絞めた。その後、首をつったり、手首をカッターナイフで切ったりして、自殺を図ったが、失敗し、直後、自宅を訪れた女性が2人を発見した。
亥聖子さんはベッドで倒れており、顔に白いタオルが掛けられていた。村武被告は女性に「もうだめだよ」と漏らしたという。
村武被告はグレーの長袖と長ズボン姿で車いすに乗って出廷。終始、静かな様子で臨んだ。
被告人質問で、村武被告は「一緒に逝けなくてごめん。それだけです」と妻に謝罪した。裁判官の「(事件を防ぐために)どうしたらよかったか」との問いに、「(他に)なかった」と述べた。
検察側は論告で、病に冒された村武被告が、「他人に頼らず最期を迎えたい」という妻の意思を尊重して介護を続けた点について「酌むべき事情はある」とする一方、「殺害を選択したことは非難に値する」と主張。一方、弁護側は「遺族は処罰を望んでいない」とし、執行猶予付き判決を求め、結審した。
村武被告は結審前、最終意見陳述で「もっと簡単に介護の援助を受けられる世の中になればいいと思う」とも述べた。
判決は7月2日に言い渡される予定。
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